ビタミンとは、生命活動に不可欠な微量栄養素で、生物が生体内で生成することができないか、もしくはできてもその量が少なく、食料として摂取しなければならないものです。
その必要量はごく僅かですが、食物から摂取しないと、それぞれのビタミンに特有の生命に関わる欠乏症を引き起こす成分です。
現在、人では厳密には13種類(水溶性9種類と脂溶性4種類)がビタミンとして認定されています。なお、それ以外にも、類似の機能を有するものがビタミン様態として容認されているものもあります。
多くのビタミンは、糖質・脂質・タンパク質の代謝に関わっている「酵素」を補助する補酵素であり、円滑な代謝のための潤滑油の働きをしています。
血管・粘膜・皮膚・骨などの健康を維持し、新陳代謝を促す働きがあります。
ビタミンは、20世紀に入って相次いで発見されました。1911年、ポーランドのフンクは、米糠から脚気予防因子の結晶(V-B1)を分離し、「生命に必要なアミン(窒素化合物)」という意味で、ビタミン「Vitamine」と命名しました。「Vita」はラテン語の生命を意味し、「amine」は窒素化合物を意味しています。
その後、1948年のV-B12まで40年足らずの間に、相次いでビタミンが発見されました。しかし、ビタミンAやCなど窒素化合物でない物質が発見されたことから、その後、国際ビタミン学会で「Vitamin」と変更されました。
ビタミンは、原則として発見順にアルファベットで呼ばれていますが、中には順序が飛んで、欠けているものや、命名原則に従わないものがあります。その理由は、下記の通りです。
・ 発見者がビタミンと命名したものの、純粋な物質として分離できず、認定されなかったもの。I(=B7)、J、L、B14など。
・ ビタミンと同様の生理作用をもっているが、人での欠乏症が確認できないため、“格落ち”の「ビタミン様作用物質」として扱われるもの。P(=フラボノイド)、U、B13(=オロット酸)、B15(=パンガミン酸)、Bt(=カルニチン)、Bx(=p-アミノ安息香酸)など。
・ ビタミンであるが、後にすでに発見済みのビタミンと同一物であることが判明したもの。H(=ビオチン)、M(=葉酸)、B3(=B6またはニコチン酸)、B5(=パントテン酸)、B10とB11(B12と葉酸の混合物)など。
・ 発見者がアルファベッドを無視して命名したもの。H(皮膚炎予防因子のドイツ語イニシャル)、K(出血性疾患予防因子のドイツ語イニシャル)、M(動物実験に使われたサル=Monkeyに由来)、pp(=ニコチン酸のダブリで、ペラグラ予防因子のイニシャル)など。
生物の種によって、その物質がビタミンか否かは異なります。
ビタミンC「アスコルビン酸(ascurvy-acid=抗壊血病の意味)」は、人を含む、類人猿やモルモット、ゾウなどにとってはビタミンですが、その他の哺乳類は、生体内でアスコルビン酸を生成することができるため、ビタミンではありません。