最近、ネットで
「納豆菌は最強の菌である」
という言葉を目にする。
多くの日本人が朝食やお摘みで食べる納豆。
「納豆は日本発祥の食べ物」
と思っている方が多いと思うが、調べてみると起源は中国の雲南省あたりだそうだ。味や見かけの違いはあれど、そこから日本をはじめ、インドネシアやミャンマーなど東南アジア諸国に広がっていったとのこと。
今もたまに見かけるが、以前は納豆というと藁に包まれて販売されていた。藁をかき分けると中から納豆が出てくる。
「何故、藁に!?」
と思うかも知れないが、藁には天然の納豆菌が棲んでいる。蒸した大豆を藁で包むことで、勝手に発酵が始まるのだ。
今、市販されている多くの納豆は、プラスチックや紙のケースに入っている。その作り方は蒸した大豆に、人為的に納豆菌を振りかけて、約40℃で1日発酵させる。単純な方法で、家庭でも大豆を蒸して、納豆菌を振りかけて、こたつの中など温かい所で保温すれば納豆ができる。納豆菌は市販の納豆を5粒くらい取り出し、そこに熱湯をかけてかき混ぜれば取り出せる。
「熱湯をかけたら菌は死んでしまうのでは!?」
と思う方もいるだろう。納豆菌は100℃のお湯でも死なないのである。納豆菌最強伝説のひとつである。
以前、お酒を造る酒蔵で働く人は納豆を食べないと聞いたことがあった。ネットで調べてみると、いくつかの酒蔵が、働く人は納豆を食べないと書いてあった。更に見学に来る人にも、朝、納豆を食べてこないでと注意を促すとも書いてあった。
理由は簡単で、納豆菌は熱にも強い上に、繁殖力が半端なく凄い。お酒を造るのに必要な麹菌や酵母菌が納豆菌に負けてしまい、美味しいお酒が造れなくなってしまう。納豆菌などの細菌は目に見えず、汚染されても直ぐには分からない。
納豆を造る時には、最強の納豆菌は助かるが、強すぎてお酒を造る時には厄介者扱いされる。
サプリメントにもなっている納豆キナーゼ。納豆キナーゼは納豆を造る過程で納豆菌が作り出す酵素。納豆のネバネバした部分に含まれる成分である。
納豆キナーゼは血液中の血栓を固まりにくくさせたり、溶かしたりする血液凝固抑制作用があり、脳梗塞や心筋梗塞によいと言われ、サプリメントとして売られている。
「だったらサプリメントではなく、納豆を一杯食べれば!?」
と思うかも知れないが、納豆には納豆キナーゼも入っているが、納豆菌が作り出す他の成分、ビタミンKも含まれている。ビタミンKは納豆キナーゼとは逆に、血液を固める血液凝固因子である。だからワーファリンなど血栓を出来にくくさせる血栓溶解作用の薬を飲んでいる人に、納豆を食べないでと医師は説明する。
納豆菌は枯草菌と呼ばれる属に分類される。最近、納豆キナーゼとは違い、生きた納豆菌や枯草菌自体を食べるサプリメントが販売されている。納豆菌、枯草菌自体にも栄養素が多く含まれているが、何よりも乳酸菌のエサとなり、腸内環境を整えてくれるという特徴がある。
また最強伝説を持つ納豆菌は胃酸にも強く、生きたまま腸まで届くプロバイオティクスの働きもしてくれる。
ただここでも最強がための問題がある。それは納豆菌自体のサプリメントを工場で製造する場合、納豆菌専用の製造ラインを設けなくてはならない。そうしなければ他のサプリメントに混入してしまう。このため納豆菌がいくら体に良くてもサプリメントとして販売されてこなかった所以である。
◎100℃の熱でも死なない。
◎繁殖力が半端なく凄い
◎強酸性の胃酸にも負けない
◎真空状態でも死なない
◎血液をサラサラにする納豆キナーゼを作り出す
◎止血を助けるビタミンKを作り出す
<筆者>NPO法人日本健康食品科学アカデミー 滝浪 周