昨年1月から新型コロナウイルスの流行は止まることを知らない。現在では生産が追いつき、ドラッグストアやスーパー、コンビニなどで気軽に購入できるようになったアルコールや次亜塩素酸水なども、ちょうど1年前あたりでは入手が困難になるほど、需要と供給のバランスが崩れていた。
そのころもドラッグストアの取材を重ねていた筆者だが、オープン時間の数時間前にもかかわらず、「消毒関連品を購入したい!」という老若男女が100名以上も列をなし、開店とともに店内に流れ込んでいく様子を幾度となく目撃した。それは東日本大震災直後に飲料水や日用雑貨品、特にティッシュペーパーやトイレットロールを買い求めに出来た、長蛇の列に匹敵をとらない様子だった。
現在ではメーカーの生産努力や、東南アジアや韓国、中国からの輸入に頼り、安定供給されるようになったので、一安心といったところだ。
今回、なぜこのような記事を書いているのかといえば、お手元のアルコール消毒関連品のパッケージに注目して欲しい。物によっては「第3類医薬品」「指定医薬部外品」「化粧品(または無記)」と一口に「アルコール消毒液」と言っても、さまざまに分類されており、これらが意味することを伝えたいからだ。
簡単に言えば、「それぞれ利用する目的が違う」である。その詳細を見てみよう。
まずは「第3類医薬品」に分類されるものだ。これは日本薬局方(通称:局方)に分類されている一般用医薬品である。局方とは厚生労働大臣によって公示される文書であり、医薬品の品質・純度・強度の基準が定められており、各医薬品の有効性を問う試験法や判定方法が掲載されている資料だ。つまり、局方の第3類医薬品に分類されている消毒用アルコールは、「厚労省から認められた治療目的の医薬品」とされ、一般的に流通している商品の中で、最も有効性が高いと言えるが、医薬品登録販売者を従事させている店舗・通販のみでしか購入できない。
「指定医薬部外品」は一般用医薬品に分類されているものの、治療ではなく予防目的に製造されており、有効成分が一定以上確実に配合されている商品だ。2009年の改正薬事法(現薬機法)による規制緩和で登場した分類であり、販売業者に情報提供努力義務を課さずに、スーパーやコンビニにも流通できるようにした商品だ。これらは「どこでも買えるけど、有効成分の配合量は担保されているよ」という意味合いを持つ。
ここまでは薬機法に基づいた商品であるから、安心して購入・推奨して問題ない商品たちであるが「化粧品(または無記)」に分類されている商品には、問題があるケースが見受けられる。化粧品は文字通り、美化することを目的としている。使用してみると、確かに「スッ」としているため、エタノールが使用されているのは確かだが、アルコール濃度が明記されていない上に、パッケージに小さく「※清涼剤として」と記載されていることもある。これは、「エタノールを殺菌の有効成分として配合しているのではなく、あくまでも清涼感を与えるために使用している」という意味を持つ。化粧前に肌の汚れを落とすなどの用途においては十分であるが、手指の殺菌消毒には適していないといえよう。
コロナ禍における手指消毒関連商品が欠品したタイミングで、こうした商品が多数店頭に並ぶことになるのだが、筆者は「絶対に騙されない」とパッケージの詳細をきちんと確認してから購入することにしていた。
ウィズコロナの中、アルコールが含まれている消毒関連品(それに誤解させるような商品)は数多く存在しているが、どの分類に入っているのか?と考え、意識しながら売り場を見るのも大変面白い。
次回は「次亜塩素酸水」に注目していく。これは様々な誤解が生じて、次亜塩素酸水を「危険なもの」「体に悪いもの」などと位置付けている人は非常に多い。だが、それは間違いだ。正しく知り、「なぜそんな誤解が生まれてしまったのか?」を紐解いていきたい。
流通ジャーナリスト=佐藤健太