先日、ある雑誌を読んでいて衝撃の見出しを発見した。
騙されるな!新聞、テレビが持ち上げる「あの健康法」のウソ!「体のために」と思ったはずが…まさかの健康被害に!みんなが信用する「あの健康食品&サプリ」が「寿命を縮める」原因になる!
記事を読んでみるとトクホや栄養機能食品、機能性表示食品など効能が表示できる分野の商品も健康食品やサプリとほぼ同等に扱われていて、「寿命を縮める原因」に含まれている。
芸能人が「マスコミはウソばかり書く!」「マスコミは大げさだ」と言っているのをよく聞くが、この見出しを見て同感した。見出しを成立させるために一方的な論説で「寿命を縮める」に結び付けている。
突っ込みどころ満載だが、以下、一部の記事内容に対して突っ込んでいく。
ウコンは日本では肝臓に良いと宣伝されて売られているが、海外ではそのような話はない。
ウコンはインドを中心とした東南アジアやアフリカの一部の国で食されるもので、海外、更にウコンの研究をしている国に限定すれば、限られた国となる。日本だけで言われていることが必ず嘘とは限らない。
イチョウ葉エキスは発ガン性が確認されている。
イチョウ葉エキスは、ドイツやフランスなどで何十年も前から医薬品として今でも使用されている。確かに発ガン性の話は出ているが、人間と発ガンのリスクの結論が出ていないのに「イチョウ葉エキスを飲むとガンになる」と消費者に誤解を与える。
健康食品を薬のように考えている人も多いが、医薬品と健康食品は全く違うものだとしっかり意識すべき。
健康食品業界に25年以上携わってきた。25年前は健康食品の種類も少なく、ドラッグストアなど店舗にほとんど並んでなかったので、医薬品と健康食品の違いが分かりづらかったと思う。
しかし至る所で健康食品を目にし、利用している人も多いこの数年、「健康食品を薬のように考えている人が多い」というのはナンセンスではないか。私が消費者と接している範囲で、薬と健康食品を誤認している人は極めて少ない。
錠剤やカプセル、粉末の健康食品が多いのは、医薬品に擬態しているに過ぎない。
擬態とは同じものに見せるために形や色を変えることである。つまり「多くの健康食品は医薬品と同じものと見せるために錠剤やカプセル、粉末にしている」という意味であろう。
私が業界に入った当初、まだ錠剤やカプセルの健康食品は法律で作ってはいけないことになっていた。それは厚生省が「消費者が薬と間違う可能性があるから」と考えていたからだ。しかしもう10年以上前に、健康食品でも錠剤やカプセルの商品を作ることが可能になった。それは厚生省も消費者が誤認する可能性が低くなったと思ったからだろう。
形を似せただけで消費者が誤認するような時代ではない。先ほどの件もそうだが、消費者を馬鹿にし過ぎている。
健康食品は利益幅がかなり大きく、「ボロい商売」の典型。
ひと昔前、1000円くらいの原価の健康食品を20000円くらいで売っているのを目にしたことはあった。原価率で言えば5%となり、確かに「ボロい商売」だ。
しかしこれだけSNSなど発達し、簡単に情報が飛び交う時代に、さすがに5%の原価率の健康食品はそう簡単には売れない。私の知っている健康食品のメーカーさんで、今時、5%の原価率で健康食品を作っている会社は皆無だ。平均的に20%くらいは原価をかけているだろう。時代錯誤も甚だしい。
薬は昔から「薬九層倍」という言葉があるくらい原価が安い。原価率は1%とも言われている。どちらが「ボロい商売」だと言いたくなる。
記事中にはトクホや機能性表示食品についてこんな内容もあった。
特定保健用食品(トクホ)でも機能性表示食品でも、欧米では科学的根拠がないと判断されている機能を堂々とうたっている商品が多くある。
例えば血圧を下げるとされるペプチド類、おなかの調子を整える乳酸菌などは食品への表示が認められていないらしい。しかし主に日本人が食べるトクホや機能性表示食品が欧米では科学的根拠がなくても、日本で科学的根拠があれば何も問題ないと思うのだが…
記事を書いた人が科学的根拠にこだわるのであれば、記事中に書かれていた下記の文言を科学的に証明してほしいものである。
〇目に効くはずのルテインで左目が見えなくなった!
〇トクホと表示されたお茶を飲んだら下痢が2日間続いた!
〇コラーゲン配合の食品を摂取したら頬や体が腫れてしまった!
<筆者>NPO法人日本健康食品科学アカデミー 滝浪 周