前回に引き続き、「新型コロナウイルスで注目された商材たち」ということで、今回は「次亜塩素酸水」に目を向けてみたい。みなさんは「次亜塩素酸水」と聞いてどのようなイメージをお持ちだろうか。おそらく「人体に有害」と認識している人も少なからずいるだろう。しかし正しい知識で使えば、ウィズコロナ時代に非常に役立つ存在となる。
次亜塩素酸水は、「電解型」と「非電解型」に分類され、電解型は食品添加物殺菌料に分類され、厚生労働省によって成分規格や使用基準が定められている。
食品添加物とは、保存料、甘味料、着色料、香料など、食品の製造過程において食品の加工・保存の目的で使用されるもの。厚生労働省において、食品添加物の安全性について食品安全委員会による評価を受け、人の健康を損なうおそれのない場合に限って、成分の規格や、使用の基準を定めたうえで使用を認めているため、電解型の次亜塩素酸水ならば安心して人体にも使うことができる。
電解型を細かく見ていくと、「強酸性次亜塩素酸水(有効塩素濃度:20~60ppm、ph2.2~2.7)」、「弱酸性次亜塩素酸水(有効塩素濃度:10~60ppm、ph2.7~5.0)」「微酸性次亜塩素酸水(有効塩素濃度:10~80ppm、ph5.0~6.5)」の3つに分類され、これらは食品添加物の1分類であるから、空中噴霧や手指に使用しても無害だとされている。特に「微酸性次亜塩素酸水」はpH5.8〜6.5ならば“飲用適の水質”であり、他の次亜塩素酸と比較しても安全性が高いと言える。
このように次亜塩素酸水は、食品添加物殺菌料として安全性が高いにもかかわらず、なぜ「危険」というイメージが持たれているかに注目したい。ひとつの原因として、「次亜塩素酸ナトリウム水溶液」と混同してしまっているということが挙げられる。
「次亜塩素酸ナトリウム水溶液」は、「次亜塩素酸水」と比べて、殺菌効果はおちるものの残留塩素の効果で長時間消毒効果が持続する。簡単に説明すると塩素系漂白剤を希釈したものであり、有名な商品には「ハイター」などからも作ることができる。ドアノブや壁、窓ガラスなどの殺菌消毒には使用可能であるが、強アルカリ性でありパッケージに「混ぜるな危険」と書いてあるのは酸性の物質とまぜるとガスが発生するためだ。
また、絶対に手指などの皮膚、空間噴霧などをしてはいけない。高濃度の場合、皮膚に付着すると炎症を起こし、低濃度だとしても何らかの皮膚症状が出てしまう恐れがある。もちろん噴霧すると人体にも有害だ。
だが、「次亜塩素酸水」と「次亜塩素酸ナトリウム水溶液」を同一の物質であると認識し、人体や空間の消毒に使用してしまう生活者が後を絶たない。これは非常に危険な行いであるため、厚生労働省や自治体からも危険性を懸念する情報発信がなされているほどだ。
この記事を読んでいる人たちは、何かしらのヘルスケア産業に携わっている方が多く占めていると思う。特にインターネット上には数え切れないほどの予防情報が発信されており、その中には、身体に悪影響を与える行為もある。今回の「次亜塩素酸水」についても同様だが、ぜひ正しい知識をエンドユーザーに向けて発信していってほしい。
流通ジャーナリスト=佐藤健太